霜月 朔(創作)

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君の背中



君の背中が、
遠ざかっていく。
冷たい風の中で、
声すら、もう届かない。

並んで歩いていた筈なのに、
いつの間にか、
俺は影になって、
君の光に溶けていたんだ。

君は笑う。
迷いもなく、振り返りもせず。
その眩しさに、
俺は目を細めることしか、
出来ないんだ。

肩を叩ければ。
名前を呼べれば。
そんな小さな願いさえ、
この距離は許してくれなくて。

君の背中は、
遠くなるばかり。
伸ばした手が、
風を掴むたび、
指の隙間から、
想いが溢れ落ちる。

君は光の中を歩いていく。
俺は影の中に立ち尽くす。
もう追いかけることさえ、
出来はしない。

だから、せめて。
君の背中が、
見えなくなる、その瞬間まで、
この目で、君を見届けさせて。

2/10/2025, 6:48:56 AM