「紅の記憶」
幼い時に別れた姉がいる
その姉はいつも夕方になると
テーブルの上に置いた鏡の前で、
口紅を塗っていた
日によって
その口紅の色は違っていた
必ず紅系色を選んでいた
時には淡く
時には真紅
時には深紅
時には秋色のような
時にはピンク寄りの紅色
ある日の夕方に
いつも通りに
姉は綺麗なワンピースを着て
紅の口紅を塗っていた
ただ、その日は
今まで見てきた口紅の色より
紅い紅い色…
その日を境に
姉は帰って来なかった
化粧品コーナーで
口紅を見ると
思い出すのだ
姉の最後の姿に
紅い紅い口紅をした唇を
11/22/2025, 12:06:11 PM