小さな勇気をもって、あなたに言った
「ごめんね」と。
何故あなたを好きになれなかったのか、考えてみた。
短編 さよならは私が決めた、今
作 余白
家族が欲しいと思った、漠然と。
今すぐにと言うわけではないが、いつか欲しいとそう思った。
結婚なんてそのうちできると思っていたし
おそらくそれに見合うお付き合いができる恋人も、
そのうちできると思っていた。
気づけばアラサーに突入し、気づけば一人で楽しく生きられるようになっていた。
「自立しすぎた人は恋愛から遠ざかる」とよく聞くが、それは本当なのだろうと傲慢にも感じてしまった。
「まずは恋人から作ってみよう」
今考えればここから間違いな気がするが、
早速人と会うことを拒み続けてきた習慣をやめた。
土日のお昼時間がなくなっていく。
「ランチしましょう」と、大して親密でもない誰かとご飯を食べる日々。
そろそろ諦めようと思っていたその時、あなたに出会った。
共に本屋に行けば、あなたは私のお気に入りの小説に手を伸ばした。
ご飯を食べに行けば、私が一番好きだと思ったものに「これ美味しい」と感動した。
大好きだけどさほど有名でない深夜ドラマを
あなたは一番好きなドラマだと言った。
きっと運命に違いない、この人なんだ、そう思った。
だけれどほろほろとその糸は解けていく。
時間が経てば経つほどに感じる違和感に、見ないふりをした。
心から願ったからだ、「どうかこの人が運命の人でありますように」と。
私は過度に束縛を嫌った。
浮気なんてしたことも、することも一度もない。
ただ、誰かに何かを制限されることに恐怖を感じる。
異常な恐怖心は、小さい頃から全てを把握したがった父親の影響だと、そうわかっていた。
力で何もかも支配しようとしていたあの姿を、どうしても思い出してしまう。
せめて友人くらいは自由に会いたいと思う私と
恋愛対象になり得るからと制限したがるあなた
その違いに気づいたのに、私は見ないふりをした。
「こう言っとけば、どうせ好かれるからさ」
年上の先輩との関係性について話をした時、あなたがいった。笑った貴方をみて私は思った、
この人、怖い。と
頭が良い貴方が好きだったのに、
その頭の良さがだんだん怖くなっていった。
どの笑顔が本当で、どれが嘘なの?
正直すぎるくらいがちょうどいい
そんな風に思っていた。
なにか皮をかぶっている人が極端に苦手で
(これもおそらく父親の影響だろう、外では仏のようだったが家での豹変ぶりを思い出すから)
彼にそれと似たようなものを感じてしまった。
きっと運命の人
貴方を好きになるんだわ
この人を好きになれば幸せになれる
キラキラとハラハラと
気持ちは溶けて消えていく
恋愛をするために恋愛をしにいった私は
幸せって何だっけ?
自分自身の精神世界に舞い落ちていく
「好きな人ができなきゃ意味がないのね」
やっと気づき、立ち上がり、一人淡々とまた歩いていく
運命の人?会えたらいいね
今日も一人楽しく、私は生きていく
1/28/2025, 4:06:42 AM