臨時班長

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一人の夜は

暗い、冷たい、そんな海。
そこに一人、足を踏み入れる。
ザザーンと音がしてふと空を見上げた。
綺麗な月。
まん丸じゃない、どこか欠けている三日月。
愛おしげに眺め、ふふっと笑った。
そしてまた、もう一歩、もう一歩と海に入っていく。
太ももら辺まで海水に浸かった。
夏とはいえ、夜の海は凍えるほど寒い。
体温をもっていかれる。
身体が冷たくなるにつれて海と同化していくような感覚を覚える。
足に力が入らない。
海に取り込まれるのかな?
ガクッと倒れてしまった。
冷たい海になってゆくようだ。
息を吐くとゴボゴボと音がした。
苦しい、寒い、何も見えない。
そんな中、一人ぼっち。

夜の海

8/15/2023, 4:37:31 PM