『開けないLINE』2023.09.01
自分はこんなにも小心者だったかと思う。
たかが、メッセージアプリひとつで、気もそぞろになってしまうのだから、やっぱり小心者なのかもしれない。
連絡先を教えてもらったものの、こっちからメッセージを送ることすらできていなくて。
送ろうとすると、ドキドキして手汗が吹き出てくる。
まだ電話のほうがマシかもしれない。
もっとも、電話すらドキドキしてかけれずにいるのだけれど。
さて、困ったことになった。
今度のオフの日に、二人で出かけることになった。だから、その打ち合わせをしなくてはないけない。
何時にどこに集合するのかだとか、どこにいくのかだとか。その他、いろいろ。
誘ったのはこっちだ。だから、こっちから連絡をとらなければいけない。
メッセージアプリのトーク画面を睨みながら息を吐く。
友人たちや先輩方の名前が並んだその画面に、あの人の名前はない。
『こんばんは』の五文字が打てない。
どうしようなどと考えていると、その画面に、
『こんばんは』の五文字とあの人の名前。
思わずスマートフォンを取り落としそうになった。
次いで、
『いま大丈夫?』
とこちらを伺う文面。
口から心臓が飛び出そうになった。
あの人の名前だ。あの人の名前が仲間に加わった。
早く返さなければと思うが、あの人のトーク画面を開く勇気がない。
おれはしばらくの間、その画面から先に進むことができなかった。
9/1/2023, 12:25:38 PM