やばいまぐろ

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『鏡』
私は可愛い。
昔から、家族に可愛いね、可愛いねと育てられ、自分でも自分は可愛いものだと思っていた。
友達も、クラスメイトも「うん。いつも可愛いよ。」って私には言ってくれる。
それに和室に置いてある全身鏡には細くて整った顔の自分がいたから、自分が可愛いことを疑うことはしなかった。
だけど、高校に上がると周りの目が変わった。
トイレに入ろうとすると、
「ねぇあの女の子いるじゃん!?」

「あ~2組の子?」

「そう!あの子結構ヤバイよね!!」

「自分のこと可愛いと思ってるんでしょ?あれで。」

「そう!相当イカれてるよね笑」

私のこと?いや、そんなはずはない。だって、私可愛いから。
そんなことを思っていたら、愚痴パーティを終えたその女子たちが出てきた。

「あっやっべwwwwww」

あからさまな態度をされた。私のことを言ってるに違いない。
何故か今まで、疑えなかった"自分可愛い"がさっきの子たちの会話で"可愛くないのかもしれないに変わった。"

いや、私は可愛いの!
そう思いながらトイレの鏡を見る。
「なにこれ?」
私は鏡に映る自分を見て驚愕した。
今までの自分とは違う。お世辞に可愛いとは言えない鏡の自分を見て涙が出た。

ショックだったが、きっと家の鏡と違うからだ。違うから可愛くないんだ。

早足に家へ帰る。

急ぎすぎてお母さんの「おかえり〜」に反応出来なかった。

鏡を見る。そこに映る自分は可愛くなかった。
「あっ…私は…可愛くないんだ」
今までの自信が全部無くなった。

それ以来、自分が"可愛くない"と思えば、思うほど鏡に映る自分は汚くなっていった。


夏休みに姉が女の子を連れてきた。
「なつ!覚えてる?私のこと…」
その子は、小学生の頃によく家に遊びに来ていた女の子。
お母さん同士が仲良かったとかで一緒に遊ぶことも多かった。
だけど、中学に上がるとき彼女は引っ越した。
「うん。覚えてるよ。久しぶり、ゆう。」
姉が私の背中を押すように言った。
「なつ。部屋で話してきな。」

「うん。行こ。」

ゆうが座って、私に聞いた。
「最近元気ないんだって?大丈夫?」
私は今までの事情を全部話した。
気づいたら涙が出ていた。

そんな私にゆうは「うん、うん。」と頷き、最後には抱きしめてくれた。

ゆうは、私の正面に座り直し言った。
「やってみる?自分磨き?」

「えっ?」
ゆうは中学で今の私と似た子を見たらしい。
自分に自身がない子。だけど、自分磨きをして自信を取り戻した。そして、元気で明るくなった。

「一緒にやろうよ!」
ゆうの顔は自信に満ち溢れていた。
「う、うん。」
どちらかというと圧に負けたという方が正しいかもしれない。

それから、筋トレ、健康的な食事、ランニング。
結果的には体重も減って、ゆうのポジティブ精神のおかげで明るくなった。

今では、あの鏡を見れば見るほど可愛くて、美しい自分がいる。


鏡は自分の気持ちが反映される。
ブサイクだと思えば、ブサイクに映る。
可愛いと思えば、可愛く映る。

それが鏡。

貴方の鏡に映るのは?

8/18/2023, 1:15:32 PM