お題:Loveyou
『月が綺麗ですね』
透華は、親が迎えに来るらしい。
あの後は全ての授業は自分が付き添った。
俺以外の奴らでもいいかと思っていたんだが、皆行ってしまってオロオロしている透華を見ていたらほっとくのはダメだと思ったからだ。
授業が終わって放課後になったらすぐに帰るかと思っていたが、親が仕事の関係上すぐに迎えにこれないとの事で部活もしていくことになった。
まぁ、部員の少ない弓道部だから見学になってしまうだろうが。
楽しんでくれたら嬉しいな。
部活が終わって帰る準備をしているが、透華はもう少し待つことになりそうだ。
先生に透華を1人にしないでと言われたので、クラスメイトに一緒に帰ろうと言われるが、断ってそばに居る事にした。
断って騒ぎやがったあいつらは一旦〆といたがいいよな。
「ありがとう。」
透華にお礼を言われた。
タイミング的に、残った事だよな。
「別に、大丈夫だ。」
さっき、親にすぐ帰らないってLINEしといたし、多分大丈夫だよな、門限ないし。
「透華ちゃん。暇だからさ、課題して待ってようぜ。」
解き方分からなかったら俺が教えればいいし、覚えているんだったら教えて欲しいからな。
「そうだね。私、これあんまり分からなくて。」
なるほど、なるほど。
俺も苦手だけど教えることになりそうだ。
透華のためにも頑張ってみようか。
「じゃぁ、教えるよ。どこからつまづいてるの。」
そう言って顔を上げたら、透華が月を見ていることに気がついた。
「月、見てるんだね。」
そう俺が言うと透華がこちらを見て言った。
「うん。多分、好きなんだと思うよ。」
その笑顔を見たら言いたくなった。
「月が綺麗ですね、透華。」
遠回しな『I LoveYou』を。
「うん。綺麗だね、秋太くん。」
まだ、気が付かなくていいよ。
敬語になった訳も、名前を呼び捨てにした訳も、全部、まだね。
2/23/2024, 10:56:33 PM