パズルのピースが埋まらないような人生は、つまらない人生なのだろうか
彼女を見ていると、いつもそう思う。
いつも欠けたピースを必死に探して。あれでもないこれでもないと、彼女の頭の中は新しいことでいっぱいだ。
そうでもしていないと、欠けた部分に飲み込まれてしまうかのように。
でも、探しているうちは見つからない。多分。
彼は自分というピースがぴったりハマる場所を探している。
辛い所にも自らとびこんでいく。一つ一つそこが正しい場所なのかどうか、確かめるみたいに。この世界というパズルの中にそれはあると、信じて。
だが努力と期待とはうらはらに、疲労と落胆が彼女或いは彼の世界を支配し始める。
彼女と彼は街中で1メートルの距離ですれ違う。
彼女は適当なピースを見つけて空白を埋め、彼は多少自分を曲げてでもカタチが違う場所に落ち着いた。
歳を重ねるごとに完璧な世界とは言い難い、イビツなパズルが出来上がる。それはシミやシワとなり、傷つき、病んで身体や心に落ち葉のように降り積もり、やがて腐敗する。
彼女或いは彼に最早瑞々しい若さは無い。一貫性や完璧さはそこには存在しない。
彼女と彼はある日、視線を交わす。
お互い、イビツに組み合わさったピースを愛おしく見ている。まるで自分を見ているみたいだ、と思う。
そして穏やかで自然な哀愁が滲み出る一枚の絵画を見つけた時のように、すべてが赦される。
11/5/2024, 1:34:36 AM