しい

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「ままー 」
「んー?なあに?」

眠そうに目を擦っていたはずの奏介が起き上がり、何かを指さしていた。わたしは洗濯物を畳みながら、ちらりと奏介に目を向ける。奏介は窓を指さしていた。

「かあかあ!」
「ん?あ、ほんとだね。カアカア、カラスだね」
「からすだねぇ」
「うんうん。まっくろな鳥さんだね。鳥さん」
「とりさん…」

たくさんの言葉を教えたくて、カラスと関連する言葉を奏介に伝えてみる。頑張って私の言葉を真似する奏介が愛おしい。まだ三語文はたまにしか出ないけど、よちよちなこの喋り方がとても可愛くて、このままでもいいのかも、と思ってしまう。さかなをさたなと言ってしまう奏介に、毎度のように笑みがこぼれてしまう。毎日可愛いが更新される我が子に対し、随分と親バカになってしまったとしみじみと思う。

「あ!とりさん!」
「あっ鳥さんどっか行っちゃったねえ」
「いっちゃった…」
「うん。鳥さんまた来るといいね」
「とりさん、いっちゃった?」
「うん。お空飛んで行っちゃったね。パタパタパタ~って!」

飛んでいく鳥のジェスチャーをしてみると、奏介も小さく真似をしながら「とりさんパタパタした!」とにこやかに笑っていた。何が楽しいのか分からない年頃ではあるけれど、この子の笑顔はとても癒しになるから、いくらでも笑ってくれ~と親バカなわたしは思う。

「そうちゃんね、そうちゃんとりさんすき!」
「お、そうちゃん鳥さん好き?」
「うん!そうちゃんもパタパタしたい!」
「え~?そうちゃんもパタパタしたいの?」
「うん!ままもいく?」

お空に一緒に飛びに行こう、なんて純粋無垢な誘いに「ママも一緒に行こうかなぁ」と幸せな笑みを返した。

ママはあなたの行きたいところ、見たいもの、何でも見せてあげるよ。鳥さんのようにいろんな素敵な景色をどんどん見に行って欲しいな、なんて奏介が大きくなっていく未来を思いながら洗濯物を畳んでいると、「あ」と声が漏れた。


「ん~~でもね、そうちゃん…」
「?」
「そうちゃん、遠くには飛んで行かないでほしいなぁ…」


鳥に憧れる我が息子
/鳥のように

8/21/2024, 4:02:08 PM