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たとえば、自らの糸に絡まって死んでしまった蜘蛛なんていないだろう。でも、ときどき人間は、自分の編み出した糸に絡めとられて息ができなくなることがある。

それがいいものにしろ、悪いものにしろ。
僕が彼とキスをしてしまったのも、僕たちを縛りつけるそれぞれの糸が奇妙に絡み合ってしまった結果ともいえる。

周りからのけ者扱いにされてきた君と、両親に捨てられた僕。僕たち2人の孤独を求める魂は、どういうことだか強い引力で引き合わされてしまったようなのだ。

月のない夜だった。僕は、僕のたった一言が永遠に君を捕らえつづけてしまうのだとわかっている。わかっているのに、だからこそ、とどまることができなかった。


「僕も君を愛しているよ」


君は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
僕は男に性的な興味があるわけではない。彼に恋情を感じているのかもわからない。


もう誰も愛したくない。
石のように孤独でいたい。


そういう僕らの望みは皮肉にも、互いに情愛を植えつけ結びあわせる強い呪縛になってしまったんだろう。

僕は今夜も君に触れる。その体温は蜘蛛の糸のように僕たちを絡めとり、もう逃れることはできない。


5/23/2023, 2:04:50 PM