Hope

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私の投稿は書きたくなった、小説を書いています。長くなると思います。ただを趣味なので下手です。誤字脱字もあると思います。






【キセキをオこしたいんだ。】



ずっと思っていた。
ずっと考えていた。
私なんていらないと。私なんて生きなくていいと。
なんにも見えない、小さな世界に住む私は生きていても意味が無いと思っていた。
でも、それも覆してくれた。
私の思っていことなんてちっぽけに見てるくらい
輝いていて
夢に溢れている人が。
ねぇ、わたし、あなたのおかげで今も幸せだよ。
本当にありがとう。あと、お母さんにも言っておかないとね。
【ありがとう】って。
産んでくれてありがとうって。
そして言ってあげだい。昔の私に生きてちゃいけない人なんていないって言いたい。叫んで言ってあげたい。
例え、人を殺したしても、大きな過ちを起こしていらないと思われていたとしても。
社会では、もちろん通じることない甘すぎる考えかもしれないけどその行動はその人なりの正義でその人が何をしようが、他の人には関係ない。だってその人の人生だから。
当たり前でしょ。ただ、周りの人がなんでなんでって絡んでくるだけ。
法律に【人を殺してはいけません】なんてものは無い。
わたしはそういうことを時々考える。
今生きていることがどれだけ幸福か。そもそも人間に生まれたことこそが、奇跡なのかもしれない。
私の周りには、残酷な人間ばっかりばったな〜。
ため息をつくぐらい。人の悲鳴聞いて喜ぶヤツとか。
まぁ、その人にとってはそれが唯一の楽しみで唯一の喜びなんだろうけど。でも思い出す度に可哀想な人達だなぁって思う。
あぁ〜ぁ。
また思い出しちゃった。これ、いつ忘れるんだろう。しつこいなー。



一 かなわない。|零《・》
痛かった。
苦しかった。
逃げたかった。
だけど逃げられなかった。
毎日のように、父は叶本 楽(かなもとがく)は自分の気が済むまで私に暴力を振るう。その姿は、とても楽しそうに見えるがとても恐ろしくも感じた。私の母、叶本自由(かなもとゆり)は私を庇って暴力の巻き添えになっていた。
でも、母は辛い顔一切見せず人前で笑い続けた。
今思い返すと母はすごいと感心する。
父は、それだけでは足りなかったのか他の女性との関係を作り仕事をサボりギャンブルに溺れていった。
それが続く日々に耐えられなくなった母は、ここから逃げようと言った。
わたしは、その考えもどうでもいいと思っていた。
父にとっては、わたしはいらない存在でストレスを発散するものとしか思われていない。それから、
「生きる希望」何てものは、どこかへ置いてきた。
私はその時点で何も無い、人間のような形をしているロボット様な存在だった。
母さえも、敵だと思っていた。
そして、逃げようと思っていた日に神の気まぐれか、最悪のタイミングで父が帰ってきた。
毎日のように罵倒されると思っていたが、何もしなかった母が反撃に出た。
わたしは、その時驚きと少しの嬉しさが込み上げてきた。
家のものは、地震が起きたからように次々と壊れ、次々と血に染っていく。
怖かった。
この前受けた傷がまたジンジンと記憶が蘇るように痛くなった。
動けなかった。
「早く逃げて!!!!!零!!!!」
母が大声を上げた。
でも、体が動かなかった。別にここにいていいと思った。
ここから逃げたとしても、わたしは必要とされていないし、逃げたとしてもどこに行けばいいのかも分からない。
わたしは、ダメな人間で生まれてきてはいけなかった。
わたしは、もう………
「早く行って!私の分まで幸せに生きて!!!!!!」

その時、昔の記憶がパソコンのデータのように蘇った。
嗚呼。そういえば色んなこと言われたなー。
いらないだの、汚いだの言われたっけ。










「零は、偉いね!」

「お前は生まれてこなきゃ良かった!!!!!」


「零。生まれてきてくれてありがとう!」


「お前は存在しない方がいいんだ!!」









【零は必ず誰かの希望になっているから。】





「…………………ッ?!?!」
体が動いた。
自然に。
玄関へ全速力で逃げる。
今、逃げなくちゃダメな気がした。
今、逃げなくちゃ私は私じゃなくなる気がした。
いらないと、わたしはいなくていい存在だと思っていたけど勝手に私の事待ってくれている人がいるかもしれないと思った。
【希望】ってこういうものなのかな。
わたし、いきてて、いい?
命って、なに?
葛藤した。
正直、出るか出ないか自分では判断できなかった。
でも、母の言葉が背中をグッと押した。
強く、でも暖かく。



バン!!!!!!


勢いよく、扉を開けた。
少し、体の重りが軽くなった。早く、助けを呼ばなくちゃ。
母が父にやられる。
人生の中で、こんなに息切れしたのは父に殴られている時しかしたことがなかった。
こんなに、こんなに怖くて逃げたくて嫌だと思うことは無かった。
早く、、、、、早く、、、、、、
息することも忘れそうになるくらい全力で走った。外にも久々に出た。外の空気は、慣れない。
私が走っていく度に、振り返る人たち。
でも、声はかけない。そのまま、見て見ぬふり。
私の住んでた家より、この大きな世界の方が冷たいと思って、私がいた世界なんかちっぽけなんだって思い知らされた。
でも、そんなこと考えている場合では無い。
早く、早く、助けを。
でも、どこに行けばいいかわからなくて
「とっ、、、とりあえず、、交番!!!」
それで、交番に向かって全速力で走った。
交番、、、、交番、、交番!!!!!
あった!!!!!!!
「たっ、助けてください!!!!母が父に!!!!」
息切れして言葉が上手く出てこない。
ちゃんと文は頭の中にあるのに。
その後、家に警察が来てくれて父は懲役2年を私の目の前で言い渡させた。
正直2年なんかじゃ足りないと思った。
それか、一生牢にいればいいと思った。
私はずっと2時間前からずっとお母さんの寝室から動けないでいた。


















「私の分まで、なんて、言わないでよ。なんで死ぬ前提なの、、、、、。死のうとしてたの?お母さん。」




「死なないで。お願いだから。お母さん、、、、、」





もう、泣くことしか、できない。
ずっとここにいたかった。




「、、、、、、、、、、、、、、、」



その後わたしは、警察に保護されて、17歳になった時に警察の河野さんに引き取られた。

17歳 河野 零 (叶本 零)

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい。頑張ってきてね。」


いつもように、カバンを持って玄関を閉める。
あの時本当に拾ってくれて良かったと思う。
15歳まで勉強なんてしていなかった。
それまでずっと病んでたから。いつになっても母のことを思い出す。あの後以来母とはあっていない。
どうしているかも分からない。
会いたいな。
でも、思い出しちゃうからそういうことはあまり触れないようにしてる。

河野さんが拾ってくれなかったから一生保護施設で隅っこで固まってた。
勉強も河野さんが教えてくれた。
今は、点数はまぁまぁいいほうだと思う。
友達の増えたり、楽しいことだらけでだいぶ救われた。
今は楽しく過ごせている方。
もう、あの暗闇からは向け出せた気がする。
高校3年生になると勉強の量ももちろん増えるし、大学の進路も考えないといけない。
「どうしよ。大学。」
考えながトボトボあるいていた。
まだ春だけど高校2年生の時から進路を考えておくべきだった。
早めに考えて損は無い。

トンッ!

いきなり肩に軽く手を置かれた。
「!ッ」
振り返ると映画のワンシーンみたいに男子生徒がたっていた。
見覚えのある顔だった。
「はよ!トボトボ歩いてっと車に轢かれるぞ。」
前を向き直ってみると信号は赤だった。
「ありがと。おはよう、浦辻くん。」
再び振り返ると浦辻くんがたっていた。
彼は、クラスメートの浦辻 京央くん(うらつじ きょうま)。
剣道部のエース。
私が入学した時に初めて話しかけてくれたのが浦辻くん。
それから2年もクラスが一緒。
わたしはみんなとも仲良くできなかったし勉強も出来なかったから1年生の時はよく浦辻くんに聞いてた。
私の1人目の友達、である。
「おう。おはよう。お前が前見ないなんて珍しいな。考え事?」
「うん。ちょっとね。浦辻くんは大学の進路決めた?」
「俺は、運動系の大学入ろうかなーって。もう話は進まってる。」
「さすが早いね。」
さすが、浦辻くん。彼は、通称天才。
勉強もできるし運動もできる、モテるし
まあ、完璧な人間なのだ。
「お前は進路決めたのか?」
「ううん。まだ色々迷っててね。早く決めないとやばいのに。」
本当にやばい。
早く決めないと、今はそれしか頭にない。
「まぁ、まだ高3になったばっかだから気軽に考えればいいだろ!」
「いや、そうだけど………」
「大丈夫だって!気楽に行こうぜ!」
浦辻くんは他人事のように私に笑いかけてきた。
それは何故かウザイ訳でも無く励ましに聞こえた。
いつも浦辻くんの言葉はうざく感じるのに、、、、
そう考えていたらもう学校に着いていた。
最近時の流れが早い。もうわたしは老化に入っているのかも。わたしはたまにそういう時がある。
楽しい時は時間が経つのが早くて楽しくない時、つまんない時はもう時間が遅く感じて余計嫌になる。
人生ってそんなもんかとか考えることがある。
自分のクラスに着くと友達の美礼がこっちに走ってきた。

ガバッ!!!!!!

「っ!!!!痛いって美礼。おはよう」
いきなり抱きつかれた。(いつもの事)
「おっはよーーー!れいっ!」
あ、そういえば名乗るのを忘れてた
改めてこんちには。いや場合によればおはようか、こんばんわか。
わたし、河野 零 (かわの れい)前の名前は叶本 零(かなもと れい)。
ゲーム大好き、読書大好きのインドア女です。
まぁ、たまに病む時あります。
親(里親)は警察官です。
周りから毒舌って言われます。(自覚ない)以上。

で、こっちの抱きついてくる犬みたいな女の子は、
雪乃 美礼 (ゆきの みれい)。
私とは真逆の超アウトドア女。
陽キャ(自称)そして可愛いい。めっちゃ。
音ゲーの女神。

「ねぇ。今日家庭科でパートナーでやるっていうやつ一緒にやろーよー。相手いないの。」
「いや、そんなわけないでょ。他にもいるでしょ。」
相手がいないと言っている美礼の後ろには物欲しそうな顔をしている女子と男子がたくさんいる。

「……後ろ見なよ。沢山いるよ。」
早く、美礼の背後の集団に気づいて欲しい。
「え、、、いや、あれは零とくみたい人の集団だよ?」
「………………え?」

いや、え?
「え……………あ、わたし!?」
「え〜?そうだよー。知らなかったのー?」
「……知らなかった」
「えー。零はこんなに人気なのに〜。」
「あ、そっち?」
「ん?」
「いや、こんなに私をキモイ目で見てる人がいっぱいいるなんて思わなかった。」
あの目は、やばいよ。
まじで。引くぐらい。わたしはごめんだ。
「き、キモイ目?!別にそういうふうに見てんじゃないと思うよー。」
「だってあんなになんかを訴えている目は初めてだよ。で、なんかキラキラしてるし。」
「あ、そっちか。零のことハレンチな目で見てるのかと。

「そっちじゃない。そっちの方がキモすぎ。」
あちゃ〜というように美礼はみんなの方を向きこ動物みたいに頬を膨らませて言った。
「零に何かしたらこの美礼が許さないからね!」
いや、可愛い。
それを聞いたみんなはトボトボと帰って行った。
美礼を見て愚痴を言っているように私には見てた。
みんな、後ずさりをしながら美礼を敵視した目で見ている。
とても冷たかった。
なんでそんな目で美礼を見てんの。
「なんでそんな目で美礼を見てんの?」
聞かれヤツらはびぐっとして振り返った。
「だって、美礼が酷いこと言うから。」
「は?酷いこと?美礼は私を守りたかっただけだし。」
「でも、私たちが零ちゃんに憧れてるの知ってて近ずかせてくれないっておしくない?零ちゃんは私たちのものなんだよ?」
は?
何それ。おかしいだろ。
「おかしいだろ。ていうか私はあんたたちの物になったわけじゃないし。てか、物じゃなくて人間だから。人のこと勝手にモノ扱いして、人の命をものみたいに測るやつとなんかこっちから願い下げなんだけど。あんた、馬鹿なの?」
「え?………………」
あいつらは、私言ったことに驚いたのか固まっている。
私は、本当にことを言ったまでだ。
命は、ものと言われていいのもでは無い。
命は重いものだ。
未来の私は考えが変わっているかもしれない。
もしかしたら、命はその人にとっては軽いもので、、、、
とか思っていかもしれない。
でも今は違うから言わせてもらう。
「人の命馬鹿にしてんじゃねぇよ!!」

久しぶりに大声を出した。

「ひぇ、、、、、」

あいつらは、私を怪物を見るような目に変わっていた。
それでいいと思った。
「お前ら、美礼になんかねぇのか?」
ふと、後ろから低い声が聞こえてきた。
浦辻くんだった。
浦辻くんはあいつらも睨みつけていた。
「なんで、そんな事だけで謝らないといけないの?!」
あいつらは、まだわかっていないみたいで、なんでなんでと喚いている。
「あ〜もううるさいな。少しは黙れねぇの?確かに、私が言っていることは周りから、見ればほんとに小さすぎることだけどお前らは基本が出来てないから言ってんの。まず、人の命をもの扱いする時点で終わってる。そういう奴がいるから誹謗中傷とか、いじめとかがなくなんねぇんだよ。」
「っ!!!!!」
あいつらは、青ざめた顔でこっちを見てる。
どうやら、美礼にいじめをしていらしい。
殴りたい気持ちでいっぱいだったけどやっぱやめた。
美礼は私を見ながら感謝の瞳を向けていた。
その瞳は涙で溢れていた。その後あいつらは、そそくさと謝らずに走って逃げていった。
ざまぁみろだ。
「っありがとう。零。誰かに言おうと思ってたんだけど中々言えなくて。」
「ううん。私は、当たり前のこと言っただけ。気にしないで。」
「それにしても、なん大声で言うとは思ってなかったぞ。」
浦辻くんが少し意外そうに私を見て聞いてきた。
「私もびっくりした。自分にあんな大声が出るなんてね。」
「あとはあんなに口悪いとは思わなかったぞ。お前、ほんとに女子か?」

バシンッ!

「うるさい。シバくぞ。」
「痛ってぇ!!ほんとにシバくなよ!」
美礼はそんな私を見ながら嬉しそうに微笑んでいた。
美礼は一見明るかったし男子からもモテていたからいじめをされていとは思わなかった。
もっと早く気づいてあげられればよかったかな。
でも、自分の中でも美礼の中でももう終わったとこだからそのことは口にはしなかった。
そして無事に、一日が終わった。
「はぁ、疲れた。今日は夜何が出かな〜。」
独り言を言いながらカバンを持って帰ろうとしたと浦辻くんに声をかけられた。
「零、今日の放課後暇か?」
「え?うん。これから帰って勉強でもしようかと。」
「ならちょうどいいな。図書室行って一緒に勉強しねぇか?明日、俺ら予備校のテストだろ。」
そういえばと思った。
私と浦辻くんは偶然同じ予備校で勉強をしている。
だいたい選ぶ教科も同じだから勉強面は一緒にやることが多い。
「うん。そうだね。行こう。」
そう言って立ち上がったタイミングで思い出した。
「そういえば美礼は大丈夫?」
ああ。と思い出したように浦辻くんは言った。
「あいつならさっき帰るとこ見たぞ。大丈夫そうだった。」
「そっか。ありがとう。行こっか。」
そう言い、私たちは図書室に歩き出した。


2 君には分からない。

図書室に着いた。
相変わらず、素朴で静かな空間がひろがっていた。
新しくできたからか、木の良い匂いがする。
ここを建てる時のテーマは【自然】だったらしい。確かに、至る所に観葉植物や鳥の置物などが置かれている。
今日は、いつも勉強をしに来ている陽キャの3人組はいなかった。
「誰もいないね。」
無言だったのがちょっと気まずくなってただ思ったことを口にする。
「ほんとだ。初めて来た。」
「え?………初めてなの?浦辻くんから誘ってくれたから何回も来たことあるのかと。」
浦辻くんは一回も来たことの無いところに私を呼んだのか。
「……なんで図書室?」
うーんと浦辻くんは少し考え込んだあと言った。
「勘。」
「え?」
勘?
「……ど……どういうこと?」
「うーん。勉強したかったからもあるし、あと行きたかったもある。一人で行くのはなんか気が引けたからお前誘った。」
「……気が引けた?」
「ああ。いっつもいるだよ。女子3人組。そん中に男一人ではいるのはちょっとハードル高かったわ。それで今日はいないな!っていう勘。」
「ああ。そういうこと。」
「今日はほんとにいないからラッキーだな!」
浦辻くんは嬉しそうにガッツポーズをした。
そして、浦辻くんと向かい合わせにして席に着いた。
そういえばちょうど調べたいことがあったから本取ってこよう。
私が席を立つと同時に浦辻くんも席を立った。
私とは違う方向へ歩いていった。
どうやら、文学の本を取りに行くようだ。
浦辻くんは勉強のこととなるとやけに焦る。酷い時は汗をかいて止まらないまま鉛筆を握っていたこともある。
あんなに点数を取っているのにどうしてだろう。
ぼーと考えている間に物理のコーナーに着いた。
私は、何故か物理だけができない。
その理由は何度自分の中で考えても分からない。
後で浦辻くんにも教えてもらおう。
「零。」
当然後ろから名前を呼ばれて少し飛び跳ねた。
浦辻くんだった。手には大量の文学の本を持っていた。
「どうしたの。」
「この漢字の読み方、すっかりド忘れしちまって……なんて読むかわかるか?」
そう言いながら1句の漢字を指さした。

「!!!!!!!!」

それは、

【恐怖】

だった。

【早く行って!!私の分まで幸せになって!!!!】




あああ。ダメだ。

また、思い出した。

カメラのシャターのようにカシャカシャとあの時の記憶が蘇る。


私は、その場で勢いよくへたりこんでしまった。
「……………………ごめん。それ、しまって」

「!!!どうしたんだ!!大丈夫か?」
浦辻くんは心配そうに本を閉じながら私の背中を撫でてくれる。
あの時のお母さんのて。

「っやめて!!!!!」
私は、思わず浦辻くんを見て大声で叫んでしまった。
「!!!!!!!」
浦辻くんは私にこんな大声がでんとわ思っていなかったかのように驚いている。
その顔は、何にがなんだか分からないと言っていた。
「なんかあったのか?」
浦辻くんは心配そうに聞いてくれる。
でも、その優しい球に私はまだ強く外れて返すことしか出来ない。
「君にはわかんないよ。」



3 妄想と現実

「君にはわかんないよ。」











長い、沈黙が流れた。そのたびに観葉植物が叫んでいるようにゆらゆらと外の風に揺らされていた。

「……ごめんな。」
それは、体のどこかから絞り出したような「ごめんな」だった。
「……………」
それを聞いて私はようやく我に返った。
「………私の方こそごめん。大声だして……」
私もあんな大声が出るとは思ってもいなかった。
そのせいか、少し喉が痛い。
「浦辻くんは何も悪くないから、謝らなくていい。私が勝手に大声出しただけだから、気にしないで。」
よく考えてみると、パニックだった私にあんなに寄り添ってくれた人に大声を出すだなんて無礼キマワリない。
最低だわ。私。
「よかったらなんだけど…………話してくれん?【君にはわかんないよ】のこと。」
浦辻くんが体勢を低くして私の顔を覗き込んでいる。
その目は、優しかった。
「うん。わかった。」


「私ね、幼い頃虐待を受けてたの。母も一緒に、それが何回も続いてそれである日に母が私をあの家から出してくれてその時のことが結構トラウマで……恐怖しか無かったから。それ見たら思い出しちゃって……」

「そっか。そんな事があったんだな、つらかったな。」
浦辻くんはそう言いながらうんうんと頷いてくれた。
それは、まるその時の私の気持ちがわかるかのように。
浦辻くんは私とおんなじ経験をしたのだろうか。

「浦辻くんも……何かあったの?」

そう言うと浦辻くんは不意を突かれたかのよう表情をした。目を見開いて、こっちを見ている。

「…………いや、何もねぇよ。」

一瞬の沈黙があったけれど浦辻くんは言った。
浦辻くんが言う「何もねぇよ。」は何かあるに違いない。
でも、それがあったとして話さないってことはすごく重いことなんだろうと思った。
これは、〜私の単なる妄想でしかないから現実はわからない。
「……あ……それ、きょうふね。」

えっと浦辻くんは私が何か言うとは思っていなかったというように不意を突かれたような顔をしていた。

「あぁ。ありがとうな。」

そう言いながら、浦辻くんはよいしょと言って元の席へ戻っていた。
【……………いや、何もねぇよ。】
あの言葉が私の頭の中で反復言語のように繰り返される。
浦辻くんの過去に何かがあったなら、

私が寄り添ってあげたい。

4 夜の海鳴り

その後浦辻くんと別れて、家に帰っていた。
いつもの帰り道は家ほどではないけど安心感がある。そういえば私、朝、信号見てなくて浦辻くんに助けてもらったんだっけかな。気をつけなくちゃな。
帰ったら何しよう。
勉強…………
しようとは思ってたけど時間が経ったらいつの間にかやる気が失せてる。
いいや。
「音楽でも聞こう………」
私は大体、音楽を聴けばなぜかやる気が出てくる。ただ部屋で聴くのではなくて海の浜辺に座って音楽を聴く。
今日は図書室に行ったけど意外と早い時間に帰れたから写真の整理も一緒にしようかな。
そんな事を考えていたら、家に着いた。
「ただいま。」
玄関を開けるとお母さん(河野さん)がキッチンと真剣に向けあってた。私はまたかと思った。
河野さんは手がとても器用で何でもできる。
でも、掃除は大苦手。
なぜかは本人もわからないらしい。
ずっと掃除していないコンロ。
数日前は「掃除するぞ!」ってやる気満々に言ってたのに。
「おかえりー今日、早いね。」
コンロと向き合いながらお母さんか言った。
「うん。音楽聴いてくるわ。」
んー。早めに帰ってくるんだよ。」
お母さんは言いながら手袋をはめている。
どうやら、掃除することに決めたみたい。
私は玄関に置きっぱなしのイヤホンを取り家を出た。

サンダルに履き替え、浜辺へ歩く。
今日は映画のシーンのように夕日が見えていてとても幻想的だった。
いつも椅子代わりにしている大きな岩に腰掛けお気に入りのプレイリストを流す。
この時間が一番落ち着く。1人の時間がとても気持ちいい。
不思議と体を音楽のリズムに沿って揺らす。

1/16/2025, 8:26:10 AM