影山零

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ボクの本当の友達は、ボクを本当の意味で理解してくれている人はきっといない。ボクの友達は男ばかりで、学校以外でも遊べる時間はあるのに、まったく遊ばない。そんな、ボクからしてみれば、中途半端な関係だ。

家に帰れば変人扱いだから、もちろん孤立している。唯一の理解者は亡くなってしまった祖父くらいかな。

亡くなる3日前、祖父からメールで「会いに来てくれるかい?」と来たので、ワタシは会いに行った。そこにいた祖父はいつも以上に真剣で、今思うと死期が近いことをなんとなく察していたんだろうと思う。祖父は眼をワタシに向けて、シワだらけの頬を揺らしながら、細い肩から腕を使い起き上がった。そして小指をワタシに向けて、祖父は言った。
「儂は儂のまま生きてしまった。今程『ジェンダー』について考えられていなかったもんだし、ひどく軽蔑されると感じてしまっていたからじゃ。今は世界がそれを変えている。行きたいように生きることを許してくれておる。変わるなら今じゃぞ…」
その言葉と同時にボクの小指を掴むと、ボクと祖父の心臓が繋がる。命を懸けてボクに教えてくれた教え。

すぐお葬式があった。親戚の人達が順々に祖父の顔を覗きながら涙を零す。その涙に込められた想いは人それぞれ違うだろう。

遂に成人を迎えることが出来た。

鏡に映る自分は「髪を短くして、ズボンを履いていて、髭を生やしている」が、鏡の中の自分は「髪を長くして、スカートに足を通していて、髭が生えていない」、自分とは対の姿だった。

テーマ-【鏡の中の自分】

11/4/2024, 2:27:57 AM