オカルトSF
300字小説
遭難信号
ザッ……。流れた音に通信機に飛びつく。
『……こちら救助艇……貴船に向けて……航行中……到着まで……後……』
「何時になったら到着するんだよ!」
マイクに叫ぶ。この宇宙船が遭難して、どのくらい経っただろう。遭難信号に応答が入るものの、救助艇は一向に着かない。
「近くにいるんだろ! 頼む! 早く来てくれ!」
すぐに生命が、ということは無いが精神が限界に近い。俺はマイクを握りしめた。
数日後。俺は別の救助艇に救助された。
「この宙域で以前、二重遭難を起こした救助艇があるのです」
以来、遭難信号に不可思議な応答が聞こえることがあるという。
確かに声だけだが、正気を保つことが出来た。俺は窓の外の宇宙空間に手を合わせた。
お題「声が聞こえる」
9/22/2023, 12:10:06 PM