どうしても上がらない成績についての弁明を思案しながら夕焼けのしたをくぐるように自転車を漕いでいる。やればできる子、やれば、やればね…そうため息をつくことが増えた母親は、私ができる子の方だと思っていたみたい。中学三年生になり、家庭内にはあきらめという空気が清浄機から外されていく。
もうすぐ、自転車登校の出来ない季節になる。
朝は暗い、寒い、というのに、夏よりも早起きをしなければならないというのは、どうしてそうやってまぎらわせて今日まで世間を回してきたのかと、歴史について、説教をしたくなる。いい時代かもしれないけれど朝はつらい。
今日こそ、8時から11時までは勉強して、12時には寝る。A高校に行けるって中学一年生の頃は思っていたし、モチベーションだって高かった。けれどそれも夏休みまでで、だんだんと、宿題だけやればいいやと思って予習をしなくなって復習をしなくなって試験前に午前3時まで勉強して30点以上はとるようにした。
友達と好きな人がかぶったこと。夏休みに判明したのも、友達が私の好きな人と夏期講習の帰り道を一緒に歩いていたからだった。何もかもがどうでもいいって思ってから今日まで勉強にも手がつかなかった。
という、言い訳が将来の私を苦しめるかもしれない。A高校に行けたら、もしかしたら友達から彼を引き剥がせるかもしれない。友達はB高校志望だったから。でも私の担任は私を安全にB高校に入れたいと思っているし、親もそう思っている。
仮にA高校に行けたとしても、授業が大変で、彼を奪うチャンスもないかもしれない。
家に着く。すでに空は群青になって、残り香みたいな日の光だけが見える。
弁明を思いつかなかった。
「遅かったね。」母親が玄関で迎えてくれる。
「うん。あのさ…やっぱり、B高にするよ…」
弁明が思いつかないから、進路ごと変えるしかない。何もかもにやぶれて、夜なんか明けなければいいと思って、志望校を変えたから、もう8時から11時まで勉強なんてしなくてもいいと思った。
「来週、雪降るみたいよ。もうそろそろ自転車はやめておきなさい。」
進路変更について、母は驚くこともなく「ああそう。頑張りなさいね。」とだけ言った。
どうせなら、たくさん積もればいい。
友達と彼の歩いた道を洗えるほどには。
12/15/2024, 12:23:32 PM