君に任せておけば安心だ。
そんな上司の一言に浮かれている場合ではなかった。
こんな仕事一刻も早く放り出して逃げるべきだったのに、俺はなんでそうしなかったのか。
いや、わかってる。新しい環境が不安だっただけだ。馴染めるかどうかなんて、命に比べれば軽い悩みだったのに。こんな時になるまで気づかなかった。
『マサル、どうしますか?』
今俺の側にいるのは案内係のロボットだけ。仲間は皆死んだ。目の前にいるこの巨大な狼に、噛み殺された。
何が安全なダンジョンで安定した収入をだ。
そんなうまい話があるものか。
『どうしますか?』
繰り返される無機質な声に、狼の唸り声が重なる。俺は剣を握る手に力を込めた。
どうするも何もない。やるしかない。そうでなければ死が待っている。ただ、それだけだった。
安心と不安
1/25/2024, 10:51:51 AM