未央

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お題「宝物」

「きゅるるるる…。」

鳴き声が聞こえた気がして、岩陰に行けば美しい人魚がいた。
太陽に反射して、髪がキラキラと輝いて見える。
ぱっちりとした瞳は澄んだ海のような、何処までも広がる青空のような蒼色だ。

「君は海の底で暮らしているの?」

こくりと頷いたから、人間の言葉は分かるのだろう。
そうだ、と思い出してポケットを漁る。
僕は、ラムネの中に入っていた透明のビー玉を取り出した。
宝物にしようと思っていたけど、お土産として持ち帰って欲しい。

「これ、あげる。キラキラしてて綺麗でしょ。」

-まるで君みたいだ。なんて口から零れそうになったけど、何とか抑えた。
嬉しそうにくるる…と鳴いた人魚が僕に尾びれで水を掛けてくる。
ぱしゃっ、と潜ってしまったと思えば、また現れた人魚。

「くれるの…?」

何処から取ってきたのか分からないけど、見た事ない貝殻を手渡しされる。
彼女の手は、ひんやりとしてとても心地よい。
貝殻を太陽に照らせば、宝石のように輝きを持ち始めた。

「ありがとう、僕の宝物にするよ!」

遠くで僕の名前が呼ばれた。
じゃあね、と手を振りながらお母さんたちの元に向かう。
また会えたらいいな…なんて、心臓がどきどきと騒ぎ始めるのだった。

11/20/2022, 10:13:17 AM