Alan.Smithee☆彡

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『ザムザ』


昼休みに一瞬だけ、うとうと寝てしまったのがいけなかったのだろうか。
目が覚めたら、友達が虫になっていた。

「む~、む~、むぅ?」

などと鳴きながら、教室をウニョウニョと動き回っている。

「……なにこれ?」

『何』ではなく『虫』だ。
はっきりと判る。
判ったとて、だ。

あたしは寝ぼけているのだろうか?
……目を擦り、瞬きをしてみるが結果は変わらない。

どう見ても虫である。
教室にある机ぐらいの……ダンゴムシ?
いや、小さなハサミがあるから、ゲジゲジかもしれない。
しかし、ハサミがあるということはゲジゲジではありえないわけで……うーん。

まあ、いいか、ゲジゲジで。

ちょうど、昼ご飯にと一個丸々もってきていたリンゴが視界に入る。
ぶつけてみる?虫嫌いだし。

「あ、いや、でも」

嫌いな虫とはいえ、あたしの友達なんだった。
いつも一緒にお弁当を食べている友達だ。

「で。なんで虫になっちゃったの?」
「む~?」
「わかんないか」

あたしはリンゴを机に置き、ウニョウニョと動き回る友達ことゲジゲジを観察する。

「人間が虫になるなんて、きみはザムザか何か?」
「む~」
「とりあえず、助けてあげたほうがいいよね?」
「むぅ?」

あたしは席を立つ。
すると、ゲジゲジは慌てたように逃げていってしまう。

「あ、待って!」
「む~……」

しかし、すぐに戻ってくる。
そして、近づこうとするとまた逃げていく。
それを繰り返すうちに教室を出ていってしまった。

そういえば、と思い出す。
友達はあらゆるものに、影響を受けやすい性格の持ち主だった。

つい最近、四時四十四分に合わせ鏡を実行して異世界に飛ばされたばかりだ。
連れ戻すのに苦労したんだよね。

今回のことだって、もしかして……。
なんか秋だからという理由だけで、読書に目覚めたんじゃ。
だとすると状況的に選んだのは、やっぱり『変身』だったり?

「ザムザって最後は死ぬんじゃ……」

廊下からたくさんの悲鳴が聞こえて、慌ててあたしも教室から飛び出した。
とりあえず、小難しいことは後回しにして、虫になってしまった友達を保護しなきゃ。

友達やめようかな、なんてちょっぴり考えながら……。





2024.9.26

9/26/2024, 1:33:47 PM