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相合傘

僕たちの国では雨は降らない。降る時は干上がった川の名残りが、昔の勢いをあっと言う間に取り戻してあっと言う間に巨大な蛇から龍のようになり辺り一面を攫っていく。後には眠っていた草花が芽吹き一瞬のオアシスを作り出して、高台で見ている僕たちを和ませてくれる。

だから、雨降りには相合傘なんかで歩けない。
その代わり、暑い陽射しを少しでも和らげる為に日傘をさして歩く。ここで肝心な事は目当ての彼女を素早く見つける事だ。
日傘には冷却機能が少しついている。
上手く彼女に大きな僕の日傘に入ってもらえたらしめたもんなのだ。
でも、なぜか顔が熱くて汗が出てきてしまう。
汗で嫌がれないかな。話しもグダグダなら最悪。違う傘に行ってしまうからだ。
一瞬の相合傘だけど近くで話しができるのは嬉しい。
内緒の話しも出来るから。

あっ!母ちゃんが日傘忘れて僕めがけて突進してきた。
仕方ない。荷物を持ってやって家まで保護してやるか。
まだ母ちゃん以外は僕の傘には入った事がないけど。

6/19/2024, 9:58:16 PM