悪役令嬢

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『私の名前』

愛馬のディアブロに跨り森の中を駆けていた
悪役令嬢は、見慣れぬ場所を発見しました。

「む、こんな所にトンネルがありますわ」

馬を近くに待機させて奥へ進んでいくと、
目の前に広がっていたのは
赤提灯が揺らめく謎の街。

色々あって彼女は、この世界の湯屋で
働くことを余儀なくされます。

「ここで働かせてくださいまし!」

湯屋を取り仕切る魔女のもとへ向かい、
働かせてほしいと頼む悪役令嬢。

魔女は彼女に契約書を渡し、
名前を書くよう命じました。

メアリー・スー・バラシー・ドラコニア

「贅沢な名前だねえ。お前は今日からメだよ。
さあ、しっかり働きな、メ!」

(メ?ただのメ?あまりにも短すぎますわ!)

それからというもの、メは朝から晩まで
休む間もなく働かされました。
雑巾がけ、配膳、巨大な風呂釜の掃除と、
慣れない仕事の連続。

「新入り、ちゃっちゃと働きな!」

(はあはあ、きちいですわ!)
贅沢な暮らしを謳歌してきた彼女にとって、
ここでの日々は過酷そのもの。

ヒヨコや角の生えた客、カエルやナメクジの
見た目をした従業員が行き交う摩訶不思議な
湯屋で、メは銀髪に金色の瞳を持つ
チャンという少年と出会います。

チャンはメに優しく接してくれる唯一の存在
で、彼女にとって大きな慰めとなったのです。

「チャンはなぜここで働いているのですか?」

ある日、湯屋の所有する畑でチャンがくれた
塩おむすびを頬張りながら、メは尋ねました。

「俺には、記憶がないんだ。自分が何者で、
どこから来たのかも分からない」
チャンの金色の瞳が遠くを見つめます。

メは驚きました。彼もまた、魔女に名前を
奪われ、この世界に閉じ込められた
存在だったのです。

「でもきっと俺たちには本当の名前がある。
そして、帰るべき場所が……」
「ええ、そうですわね」

二人は誓います。記憶を取り戻し、
この世界から脱出する方法を見つけ出すことを。

しかし、彼らの前には数々の試練が
待ち受けていました。

果たして二人は魔女の監視の目をくぐり抜け、
真の名前と自由を取り戻すことが
できるのでしょうか。

7/20/2024, 5:45:21 PM