『今日の天気はいつもどうりあいまいな天気となるでしょう。ですが万が一のことがあるので、体温調節ができる服装で出かけることをおすすめします。以上、今日のお天気でした。』
天気予報が終わり、ニュースに切り替わろうとしたところで、僕はスマホの電源を切った。そしてイヤホンを外し、窓から空模様を覗いてみる。
空は天気予報の通り、曇っているが晴れているようにも見える…実にあいまいな空模様であった。
僕は今日の空模様を確認すると、先程頼んだこの店オススメ”であろう“カフェオレに口につける。
味は美味しいが、牛乳の甘さとコーヒーの苦みが混ざりあい、矛盾で溢れてたあやふやでわかりにくい味であった。だがそれが人気になった理由だろうと、僕は喫茶店に流れるジャズに耳を傾ける。そしてもう一度空を眺めた。
…いつからだっけな、こんなあいまいな空になったのは。僕は心の中で呟いた。
ここ最近、晴れや曇り、雨と言った単語をいっさい聞かなくなった。かわりに皆、口を揃えて言うのだ、あいまいな空って…。空だけじゃない。みんな自分の言葉ですら、あいまいと化している。
さっき僕は、自分が頼んだカフェラテを、この店オオスメらしい、といったがそれは僕があいまい化したのではない。メニューにその通り書いてあったのをそのまま読んだのだ。
あいまいなのはそれだけではない。人同士の会話だってそうだ。最近は誰もが話の最後に『たぶん、だろう、かもしれない』という言葉をつけている。
みんな自分の言葉を霧のようにぼかすようになった。だがそのようにしてしまうのは僕にもわかる。言葉をぼかすということは逃げ道を造るのと同じだ。言葉をあやふやにすることで自身にかかる責任もあやふやにすることができる。
それは誰にとっても楽な選択肢だ。
だがそれでいいのか?と僕は時々思う。
逃げ道には限界がある。その限界までに追い込まれたとき、人はどうなってしまうのか。そんな考えが僕の頭の中を巡る。
あいまいは楽な逃げ道であり、脆いガラスみたいだな。
そう思い、僕はもう一度甘いようで苦い、カフェラテに口をつけた。
題名 あいまいなのは…
6/14/2024, 12:32:06 PM