ゆかぽんたす

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「久しぶり」
そう言って私の隣に座った彼は、10年前の時よりもずっと格好良く見えた。あの時だってもちろん格好良かったけど、10年経った今は大人っぽさと色っぽさが追加されて不思議な感じ。まるで別人と話しているみたいだけど、喋り方は何ひとつ変わっていなかった。彼の、ちょっとゆったりめな口調が私は好きだった。なんだかそばにいるとほっとさせられるから。何でも許してしまいそうになる。
「同窓会、来ないのかと思ったよ。キミは仕事が忙しいんでしょ?」
「うん、まぁ。でもちゃんと休みだってもらえてるよ」
「ははは。そりゃそうだ」
笑うと出来るえくぼもあの頃を思い出させる。誰にでも優しくて、好意的で。クラス中の女子はみんな貴方に想いを寄せてたんだよ。私だって、その1人。
「何か飲む?」
「うん。じゃあ……同じのをもらおうかな」
了解、と言って彼はウェイターのほうへ行ってしまった。今夜は既に3杯飲んでる。頭の中はとっくにふわふわしている。頬に手をやると熱を帯びていた。お酒のせい、ということにしておこう。彼がまた戻ってきても、うっかり変なことを口走らないようにしないと。
でも、どこか期待してる自分がいる。ポーチから真っ赤なリップを取り出して丁寧に塗り直した。私もあれから10年経ったの。少しは、積極的になってもいいでしょ?

11/27/2023, 9:27:13 AM