猫背の犬

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青色の夕方のなかで静かな絶望に首を絞められたあの日から気づけば九ヶ月が経っていた。それを物語の始まりだと揶揄するのならば、終わりにもきっと同じような絶望が待っていることだろう。あたたかな幸福に酷似した絶望だ。冬の海に服のまま浸かったときの、あのじわじわと迫る冷たさが、いのちを着実に蝕んでいく。群青色の海底近くにたどり着いたとき、真綿のように包まれているこの感覚こそが絶望だったのかと気づいた。僕はずっとこれを、この感覚を、幸福だと勘違いしていた。やんわりとした後悔と共に押し寄せる虚しさを待たずとも、ぷつりと物語は終わる。——大丈夫、しあわせだった。僕は。

4/18/2025, 11:13:28 AM