酸素不足

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『一年後』


ちょうど一年前だった。
きみがこの世から居なくなったのは。

すぐに追いかけようとしたけど、できなかった。
だって、きみが「幸せになって」って最期に言ったから。

だから、幸せを探して、探して、探して――。

結局、幸せは見つからなかったよ。
だってそうじゃないか。隣にきみが居ないのだから。
いつ、どこで、何をしていても、きみが生きていたらと考えてしまう。

ごめんね。僕は幸せにはなれなかった。
いや、きみが居ないと、僕は幸せになれないんだよ。

だから、もう、きみの所へ逝っても良いよね。
きみは、泣きながら「バカ」って言うんだろうな。
でも、それでいいんだ。それがいいんだ。


とある貴族の病弱な令嬢が、この世を去ってから、ちょうど一年後。
甲斐甲斐しく彼女の世話をしていた執事が、この世を去った。

5/8/2024, 11:03:53 AM