「運命の雨」
「雷は怒りだと言われているけど、雨が空の涙なら雷は嗚咽なのではないだろうか」
そう言った彼に反論したことがある。
怒りで涙が出ることもあるのだと。
稲光とビリビリとくる感覚は、嗚咽ではなく怒りだと。
夏になると思い出す。
彼との会話は、どこまでも続いた。
興味ある分野が、ほんの少し被っていて、それが世界を広げる間口になっていたのだ。
図書館へ向かう坂道を降る。
向こうから彼が歩いてくるような気がして、首を振る。
居るはずない。
彼が東京へ出てから、連絡も取っていないし、今さらどんな顔をして会えるというのだろう。
別れは最悪だった。
やり直したくないくらいに。
ぽつり、ぽつりと足元が濡れる。
駆け込んだ先で、運命の輪が再び廻り出すなんて、この時はまだ思いもしなかった。
────空が泣く
9/16/2024, 2:46:01 PM