「お前は言ってることとやっていることがあべこべだ」
彼女はよく僕に呆れてみせる。
嘘は本当に苦手だし、とっさに誤魔化すのも得意ではない。しかし、僕という人間は彼女からはそう見えているらしい。
「あるいは、言葉より先に行動が来るのか」
できる限り理性的にあろうとしているつもりだ。言葉を尽くそうと努力もしている。ただ、努力が必要という時点で確かに僕にとってそれは不自然なことなのかもしれない。
「どうあれ、難儀なやつだな」
そう言いながらも、彼女はまだ僕のそばにいる。いてくれている。
いつか彼女は僕の前から姿を消すという。しかしまだその時ではないのだ、と、彼女の温もりが言葉もなく告げている。
僕は彼女が好きだ。焦がれていると言い換えてもいい。その温もりが好きで、その声が好きで、その笑顔が好きで、彼女の表情が曇るようなことはあってはならない。そんなものがあるなら、僕は誰よりも先にそれを「なかったこと」にしなければならない。
聡い彼女が僕の気持ちに気づいていないわけがあるまい、ただ、僕自身からきちんと伝えたことがないだけで。
――さて、どう伝えようか?
なるほど彼女の言うことは正しいのかもしれない。僕にとって言葉とはあまりにも無力で、彼女の手に指を絡めることで、かろうじて、僕の思いが伝わることを祈るしかないのだ。
20250214「そっと伝えたい」
2/13/2025, 10:46:54 PM