Yushiki

Open App

夕焼け色に染まった公園で。
ひとりでブランコを漕いでいると。

「ねぇねぇ、君」

と呼びかけられた。

誰もいなかったはずの隣のブランコに。
いつの間にか自分と同じくらいの年の女の子が座っていた。

「いつまでここにいるの?」

女の子がそう訊いてきたので。

「お母さんが迎えに来るまで」

と答えたら。

「ブランコ好きなの?」

と訊いてきたので。

「わかんない」

と答えた。
そしたらその女の子は首を傾げて。

「なーんだ」

と間延びした声を出したあと。

「ブランコをいっぱい漕いだから、君の足はそんなに短いのかなと思ったのに」

と言ったので。
お母さんはもう迎えに来ないのだと、ようやく僕は悟ったのだった。



【ブランコ】

2/1/2023, 2:31:43 PM