あなたと目が合う。
ほんの数秒、世界から音が失われる。
束の間の幸福、
それに反してあなたの瞳からは色が消えていく。
あぁよく知ってる。
あなたは嫌いな人を見る時、よくその目をしていたから。
数年振りにあなたに会っても、
その曇った表情だけはあの頃と何も変わらないのね。
ほんとに後悔してるの、あなたを傷つけてしまったこと。
苦しいのよ、あなたにそんな顔をさせてしまうことが。
あなたとすれ違うその瞬間、
行き場のない感情があなたを求めて渦を巻く。
現実は、淡い期待さえ打ち砕いていく。
反射的に振り返った先で、
同じように振り返るあなたと目が合った。
少しだけあなたの瞳が揺れる。
きっとこの痛みは、私たちにしか分からない。
ほんとは、諦めたくなんかなかった。
あなたへの想いも、あなたとの幸せも。
失うことがあなたのためだと、そう言い聞かせてきただけ。
私を見る度、あなたはきっと思い出してしまうのね。
あの時私が味わったのと同じ痛みと虚しさを。
もう戻れないところまですれ違ってしまった、
だけど終わらせることはできる。
好きだったあなたの笑顔を濁らせていたのは私だもの。
私は、笑顔であなたに手を振る。
"ありがとう"と"さよなら"を込めて、あなたのもとへ。
『あなたのもとへ』
1/15/2025, 2:50:15 PM