心と心
「今日はどうする?泊まる?帰る?」
いつものように、彼は私に尋ねてくる。
「えー、どしよっかなぁ....。」
君の好きにして。いつもと同じ、素っ気ない言葉が彼の口から紡がれる。いつもいつも、ストレートな物言いに、周りは冷たいと言うが、私は彼のそんなとこも愛おしい。
彼のストレートな言葉は、嘘がない。お世辞も嘘も存在しない。だから、いつも人の言葉の裏を掻い潜ってしまう私は、唯一、その言葉を素直に疑わずに受け止められる人だ。バサッと言い切る彼の言葉も、私には彼の優しさに感じる。私には冷たいくらいストレートな彼がちょうどいいのかもしれない。
“明日バイトだし、帰らないとしんどいよ。”
大人な私がいい子の回答をする。
“彼と一緒にいれる時間が限られてるから、まだ一緒にいたいなぁ。”
子どもな私が感情任せの回答をする。
“たしかにあと2週間で会えなくなるけど、仕事と恋人は別!それで生産性落ちたらどうするの?”
“そうだけど、一緒にいたいよ....。2週間したら、遠距離だよ!ギューして寝るのもできなくなって、さみしい。”
でも。でも。と、大人な私と子どもな私が言い合いを続ける。
「なぁ、」
隣からぎゅっと私を抱きしめた彼は、子どもみたいに顔を隠してる。
彼が顔を埋める私の胸元は、彼の特等席であり、通常席だ。
言葉は素っ気ない彼は、態度が素直で、ちぐはぐしている。
「どーするん?」
顔をぐりぐりと押し付ける彼は、私の背中に回した手に更に力が籠ってる。自分で自覚してるのだろうか、それとも無意識だろうか。
どちらにせよ、
「....かわいいね。」
思わず微笑んでしまった私は彼の頭を抱きしめて、優しく頭を撫でる。
“かわいい、かわいいよ!やっぱり今日も一緒にいよ!”
子どもな私はうちわとペンライトを振り回す勢いでいる。
“かわいいけど、かわいいけど!だからこそここは私が大人な判断するべきでしょ!”
大人な私も、こっそり指ハートしている。
私は、彼のことが好きすぎるのかもしれない。
大人な私も、子どもな私も、両者の言い分はわかる。
だから、
「どーしてほしい?」
いつものように、余裕ある態度で彼に問いかける。
答えは知ってる。いつもと同じ。
「....一緒にいてください、デス。」
外国人の彼は、いつもと同じ、こういう時だけカタコト日本語を話す。いつもは日本人顔負けの日本語をペラペラ話すくせに。
そんなとこも、愛おしくてたまらない。
「わかりました。」
優しく彼の頭を抱き寄せた私は、彼に気づかれないように、そっと彼の頭に唇を落とす。
頭の中で大人な私と子どもな私が親指をグッと立ててる。どうやら和解してくれたらしい。
「愛してる。」
顔を上げた彼は、そう言って私の唇に自分の唇を重ねた。
恥ずかしげもなく、そうやって言葉にして、行動にする彼のことをずるいと思う。
「私も....。」
彼の目を手で隠して、彼の頬に唇をあてる。
「....サランヘ。」
恥ずかしがりな私の、最大限の愛情表現だ。
12/12/2024, 11:33:22 PM