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蝶よ花よ

 ワルシャワでそのコンサートに行くことになったのは全くの偶然だった。
 友人に急な用事が入ってしまい、自分の代わりに行ってくれとチケットを渡されたのだ。「君も小さい頃ピアノを習ってたって言ってたでしょ?」「ほんの少しだけよ」
 赤いドレスを着た少女が整然とした拍手とともに壇上に現れた。ピアノの前に腰掛け、白い指先を鍵盤に添える。ふっと柔らかに微笑むと同時に、弾き始めたのはショパンのワルツ。
 難度の高い曲でありながら技巧を感じさせない軽やかな演奏を聴きながら、楽しげな異国の少女に私は一瞬だけかつての自分の姿を重ねてしまい、苦笑いして首を横に振るのだった。

8/8/2023, 1:10:30 PM