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「イブの夜」

今年はもう無理だ。

この時期になると、年々その思いが強くなっていっているような気がする。その原因は、娘だ。

いい子にしていると、クリスマスにサンタクロースがやって来て、プレゼントをくれる。

12月も半ばを過ぎると、子供たちは突然いい子になりだすのは、どこの家庭も似たり寄ったりだと思う。

字を覚え出す頃には、サンタさんへのお手紙と称して、まるで暗号か?と思わせる難解な文字で手紙を書き、枕元に置く。

一方サンタ側は、12月に入った頃から、娘へのリサーチが始まる。何をお願いするつもりなのか?の情報を、まるでスパイのように、さりげなく、気づかれないように聞き出すのだ。

ちなみにうちは、父はスパイで母は殺し屋、娘は相手の考えを読み取れる超能力少女ではないので、念のため。

年を追うごとに、手紙は解読可能になっていくが、内容がエグくなっていく。今年の手紙は、ずばり「iPad をください」だ。

いやいや私のが、初代 iPad Air なのに、何故娘の方が、最新の iPad になるんだ。しかも円安の影響で、apple 製品は、軒並み値上げされたばかりだ。最低でも本体¥68,800 + apple Pencil ¥14,880 、合計¥83,680 なり。

娘よ。残念だがそれは無理だ。

今までで一番高額だったのが、 Nintendo switch だった。これも痛かったが、私のiPhone6s の買い替えを見送って、サンタが持ってきた。

娘は今でもマイクラで、恐ろしいほどの娘ワールドを建築中であったり、あつ森でサソリ島に行きたいと夜な夜な頑張っていたりしている。小さい頃、ハッピーセットを店内ですぐに破壊していた頃に比べれば、長く遊んでいる方だ。

我が家にサンタさんが来なかった年はない。毎年それなりに、お願いを聞いてきたつもりだ。しかし、今回ばかりは無理だ。こんなの、おもちゃの値段ではない。我が家のサンタさんは、ここ数日、どう言い訳しようか、そればかり考えていた。

ところがだ。今日12/24になって娘が、「iPad やっぱりやめるわ。音楽聴きたいから、小さいスピーカーが欲しいねん。」と言い出した。いいぞ、娘よ。それだったらいける!

かくして、少し遅めのクリスマスパーティーを終え、娘が寝たのが、0:30 頃。それからサンタは、夜のドンキホーテに、トナカイならぬ車を飛ばし、Bluetooth の小型スピーカーを買って帰り、完全に寝静まった3:30過ぎに、娘の枕元に置いて、無事今年のミッションを終えたのだった。

今日は娘の習い事の大会があるので、あと1時間ほどで起きるだろう。

その時娘が喜んでくれれば、ほぼ徹夜になってしまったサンタとしては、これ以上嬉しいことはない。

いや嘘だ。本当は私にもサンタが来て、新しいカメラを置いていってくれれば、そっちの方が嬉しいと思う最低の偽サンタだ。

でもサンタさん。いい子にするから。
ね、お願いします。

12/24/2022, 8:50:31 PM