—ピポラの大冒険—
「うぅ、痛たた……」
飛行船の扉を開けて、ピポラはよろよろと外に出た。着陸に失敗し全身に衝撃を受けた。
「ここは……」
ピポラは辺りを見渡した。
田んぼがどこまでも広がり、遠くには背の低い山々が連なっている。空を見上げれば、美しい星空が見えた。
「地球に着いたんだ……!兄さんの言ってた通り、素敵な星だなぁ」
ピポラは兄から話を聞いていた。
どこに行っても景色は綺麗で、この星の住人はみんな親切だ、と。
早速、遠くから住人がやってきた。
「この星の挨拶は……、こんばんは!」
「お前かっ!うちの田んぼを荒らした奴はっ!」
何人かのおじいさんが、鬼の形相で桑やスコップを持ってやって来た。
「話が違うじゃないかっ」
ピポラは飛行船を残して、全速力で逃げ出した。後ろを見ると、飛行船がボコボコに殴られている。
(あれでしか星に帰れないのに!)
涙を浮かべながら、ひたすら遠くまで走り続けた。
こうして、ピポラの旅が思わぬ形で幕を開けた。
果たして無事に故郷へ帰れるのだろうか。——それはまだ、誰にも分からない。
お題:夜空を超えて
12/11/2025, 2:37:54 PM