Yuno*

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【突然の別れ】

私に背を向け煙草を吸う彼をぼんやり眺めるのが好きだった。けれど、今夜はいつもより彼が遠く感じるのは何故だろう。薄っすらとした不安が胸に広がっていくのを感じて、何だか怖い。

「ここに来るのも、今日で最後だ」
「そう」
「しばらく日本を離れる」
「帰国はいつ頃?」
「さあな。いつ戻るかも分からねえし、ここらが潮時だろ」
「潮時……」
「何だよ。寂しいとでも言うつもりか?」
「そう私に縋って欲しいのはそっちでしょ?」
「言うじゃねえか」

寂しいと思う本音など、きっと彼にはお見通しなのだろう。煙草を吸い終えた彼が私の方へ向き直り僅かに口角を上げ、笑う。

「んな泣きそうな面で粋がっても、説得力も可愛げもないぜ」

そして次の瞬間、息が出来なくなる程きつく抱き締められた。煙草と、すっかり薄くなって消えかけた香水が混じった彼の匂いで鼻の奥がツンとして、視界が滲んで行く。

別れがこれ程早いだなんて、思ってもいなかった。
始まりは只の慰め合いだったとしても、私達はこれから時間を掛けて互いを理解しあっていくのだと。そう信じて疑わなかった。

何処へ行くの。どうして私を置いて行ってしまうの。独りにしないで。
聞きたい事言いたい事が沢山あるはずなのに、どれ一つとして出て来ない。

5/19/2023, 10:34:48 AM