たまき

Open App

#71 時を告げる


雲が流れ、明暗を繰り返している午前。
朝はマシになってきたが、
太陽の動きと共に暑さが圧を掛けてくる。

畑、といっても家庭菜園用の小さいものだが、
そこで花芽のなくなったオクラを土から抜いて、
たまに顔や首へと流れてきた汗を拭った。

今は、秋に向けて次の野菜を植えるための準備…の準備といったところだ。


(暑さはいつまでも夏の様なのに)

先日最後のひとつを収穫したスイカも抜く。

虫が多くなった気がする。
小さなカマキリを見つけて和んでた頃が懐かしい。
可愛くもない煩わしい奴らに眉をしかめつつ、手は止めない。

(ここのところ蝉の声を聞かなくなった気がする)

抜いたものを隅に持っていったら小休憩。
水分補給しながら空を眺めた。

「ふぅ…」

ジージリジリジー…

(あ、セミ)

私の心を読んだかのようなタイミング。
夏はまだいるぞと主張している。

(相手は見つかるのかな)

暑くて手抜きした雑草の中から、
ぴょんとコオロギが飛び出した。

「もう少しだけがんばるか」

季節を精一杯楽しもう。
時を告げる虫たちと共に。



「その前に虫除けスプレーもう一回しとこ」

9/6/2023, 11:41:48 PM