"糸"
銀色の針が布地をスイスイ泳ぎ、均等な足跡を残す。
最後にパチンと糸端を切って、出来上がり。
昔は反物から着物を仕立てられてようやく一人前と認められたの、と祖母は言っていた。
あなたも簡単な針仕事はできた方がいいわ、と様々な事を教えてくれた。
祖父にはあんまりいい顔をされなかったけど。
ほつれの直し方やボタンの付け方から始まり、最終的には衣服の仕立てまで。
縫い上がった単の着物や白いシャツを見分し、祖母は合格だと満足気に頷いた。
身につけた技術は一生物だ。
今でもたまに甚平を縫ったり、綿入れを作ったりと重宝している。
簡単な繕い物はできた方がいいと思うけど。
でもまぁ、今の大量生産・大量消費の時代なら必要無いのかもしれないな。
6/19/2025, 3:47:00 AM