まにこ

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陽の光が燦々と降り注ぐ。
眩しくてゆっくり目を開けると、君の大きな背中と引っ掻き傷がいくつも付いているのが分かった。
ついこの間まで「お兄ちゃん」と自分を慕って、キラキラした眼差しで着いてきていたと思ったのに。
いつの間にこんなに逞しく、大きくなったのだろう。
本来なら君の隣にいるのは私ではなくて、美しい女性と家庭を築いて子を成して……
じくじくと胸の奥が痛む。
分かっていた、もう彼を放してあげることなど決してできないのだと。
可愛くて愛おしくて、いつの間にか自分の中の一部に彼がいる。
「……普段からそれくらい私のことも熱っぽく見てください」
急にごろん、と彼が此方を向いた。……いつの間に起きていたのか。
「背中が熱で焼けるかと思いましたよ」
「……何、言ってるの」
真っ直ぐにこちらを見つめる熱い視線。思わず目を逸らしてしまう。
「もっと私を見て、先生」
額に柔らかい感触、接吻されたと気付いた時には上にのしかかられていた。
「こ、こら……こんな朝から」
「あまりにも情熱的なお誘いをしてくれたじゃありませんか」
お兄ちゃん、そう呟いた唇と自分のそれとが重なる。
色々と反論したい言葉は全て吸い込まれてしまった。

2/10/2025, 12:52:33 AM