うきわ

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星空を見ると、大学時代を思い出す。

引っ込み思案で嫌なことがあるとすぐ逃げる、ハッキリ言ってダメ人間だけれどとても優しい友人と一緒に、よく星空を見上げていた。とくに大きな流星群がくる日は、寒さに凍えながらも大学の校舎から飽きずに眺めていたものだ。私は、ひとりぼっちの彼女を救う明るい救世主のふりをして、じつは自分が救われていたんだなと今は思う。

いちばん最後の講義が終わると、冬の外はもう真っ暗。お腹も空いているけど、家も嫌いじゃないけど、もうしばらくこの非日常の世界に浸っていたい。
大学を卒業したら、社会人として毎日働かなきゃならない。特別何の才能もなく、アピールポイントもなく、やりたい仕事なんて見つかるんだろうか。そもそも就活すらまだ始めていないし。恋愛もしていないし、今後結婚なんてできるんだろうか。人並みに立派な大人になれるんだろうか。

大きく弧を描く流れ星を見つけたとき、友人と柄にもなく跳び跳ねてはしゃいで、そんな諸々の不安な気持ちが一瞬吹き飛ぶようだった。

あれから十数年経つけれど、私はちっとも大人になっていない。ただやりたいことだけを自由にやって、大した責任も負わない仕事で細々と食いつないでいる。友人に至っては、いい齢して実家暮らしのフリーターだ。

それでも今、あのときと変わらず最高に楽しい。


7/5/2023, 1:16:53 PM