陽葵

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#オアシス

まだ目覚ましの鳴る3時間も前。

仕事に行きたくないのか、
単純に寝苦しさからなのか。

嫌な目覚めだった。

二度寝しようとした時、電柱に止まる2羽の鳩が
何故か目に留まった。

まだ暗さの残る空と少しだけ差し込む太陽の光。

辺りに他の鳥はいない。

人間が簡単には届かない場所で寄り添っている。

まるで2羽だけの世界だ。



仕事で上手くいかなくて、逃げたくて仕方がなかった。
でも、逃げる勇気なんてなかった。

私の様子を知る上司は、
毎日仕事にきて偉いねと褒める。

休んだって何も解決しない。
仕事に行く事しか選択肢になかったから。

本当は休むだけじゃなくて、いなくなりたかった。


電柱に鳩が止まるなんて、日常の光景。

それでも何故だか、涙が出てきた。


私、誰かに寄り添って欲しかったのかな。

頑張った事じゃなくて、辛かった事に。

辞めてもいいよって。

流れる涙を無視して、無理やり目を閉じる。

自分の心が壊れる音に気付かない振りをして、
くまのぬいぐるみに抱きついた。











7/28/2025, 6:14:04 AM