好きじゃないのに
ある大学生
時々、この男は視野が狭いと思うことがある。まるでこの世の人間全員が、大判焼きをじまん焼きというかのように、自分ができることは。他人にもできる程度のものであるように、そう思い込んでいる。これがもっといやらしくて、悪意を持ったものであったら俺は納得できるような気がするが、あの男は純然とそれを盲信しているので、俺はなんだか首を傾げたくなる。
「ね、これ好きだったよね」
そう言って差し出されたのは、コンビニでは売っていないような、どこかレトロな雰囲気を纏わせる菓子。駄菓子とも違う、和菓子とも違う、例えるなら学校の安い自販機で売られている、知らないメーカーのメロンクリームソーダ味のような、そんな感じの菓子。それを、この男は、一度俺に食べさせて、お世辞を言われたというだけで、その日から何度も何度も手渡してくる。美味しいすら言っていないのに、好きだなんて一言も言ってないのに。
しかし、この男はお世辞を信じ、そうして求愛する動物たちに倣うかのように、何かを俺に与えてくる。好きでもない菓子を、好きでもない男が、俺に。
そう、好きじゃない、こんな男、俺は好きじゃないのに。
3/25/2026, 2:08:07 PM