ゆかぽんたす

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数時間前までは美しい青だった。水面がきらきらしていて、太陽に反射するようにどこまでも澄みきっていた。それが夜になると全然違う景色になる。どこまでも広がる真っ黒い世界。音もない、生命感も感じない。うっかり気を抜いたら此方に襲ってきそうな夜の海だった。今みたいなメンタル状態の時にこんな場所に来ては行けない。全てを呑み込まれそう。夢とか希望とか、そういうポジティブなものはぜんぶ、真っ黒く汚されてしまいそう。
まだ、やれるのに。私はまだ頑張れるのに。夜の海が私の心を孤独にしようとする。そんなものに負けては駄目だとようやく重い腰を上げた。もう少し強くなれたらまた改めて夜の海を眺めに来よう。そう誓って、自分のあるべき場所に戻ろうと踵を返す。
その時、生ぬるい海風が髪を揺らした。海が行くな、と言っているのか。はたまた私の背を押す優しさなのか。分からないけど、汐の風は流れそうになった私の涙をうまいこと止めた。

もう少し、あと少し強くなれたら。夜の海を好きになれるかもしれない。

8/15/2023, 12:09:59 PM