るに

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スポットライトが私に当たる。
!マークじゃ足りない感情。
大きく息を吸って
身振り手振りも使いつつ、
本当に資金が足りなくて困っている
ギルドの案内人のように演技をする。
これといって印象に残るものがない
ただの演劇。
感情は込めれば込めるほど良くなると
言われるし、
衣装の細さは気に入っている。
だからやらないという選択肢は無い。
まあでも、
いつまで経っても緊張からは
逃れられない。
心臓は爆発しそうなくらい
鼓動が早くなるし、
冷や汗はたくさんかくし、
手も足も震えるし、
セリフ飛びそうになるし。
頭は常に真っ白。
劇が始まるまでは
ずっと失敗することを想像してしまう。
この劇で私はギルドの案内人の役。
平々凡々とした村で生まれた子が
村の中央にある剣を抜いてしまい、
何故か勇者となる。
さすがに一人で
魔王は倒せないと考えた勇者は
隣町の冒険者ギルドへ向かい、
ギルドマスターとして仲間を集め
魔王を倒しに行く。
しかし、
色んな物を換金出来る冒険者ギルドへ
勇者は珍しい代物をたくさん売りつけに行く。
そこで換金に
少し困って対応しているのが私の役。
ギルドの案内人は
勇者が換金しに行った時に
毎回代わってるし、
私の役はほとんど無いのだけどね。
"Good Midnight!"
いつか緊張を解せた時は
目一杯演劇を楽しもうと
ガタガタ震える手を握りしめて。

8/15/2025, 4:59:08 PM