『子供の頃の夢』(自創作です⚠️)
今日もオルター御一行は、元気に星空の下で野営をして夜を過ごす。星の光が降り注ぐ中に焚き火を燃やして肉を焼く、なんとも贅沢な日。
「俺の夢はずっとさ、」
剣士の兄妹はテントでいびきをかいている頃、落ち着きのある二人の語らいが始まる。
「通訳だったんだ。異能を貰ってからずっと」
「へえ。ずっと?」
「うん、絶対この力で成り上がってやる!って」
「野心家ですねえ」
オルターのレンズの奥の瞳は、焚き火を反射しながらたなびくデナーの灰色の髪を見つめている。
「お前は?」
「ぼく?」
オルターの読心する異能は、自身で使用出来ない。デナーが本心を出そうと殺そうと、二人きりのタイミングでは分かりえない。
「…………たくさんありましたね」
「世界一の忍者!とか?」
「それもありました」
「変身ヒーロー?」
「それもね」
だからこそ、オルターは嘘もホントも一緒くたに飲み込む。そこが、彼を愛す人が絶えない理由なのだろう。にしても所詮は男の子、語れば語るほどに、共通の夢が出てくる。ある時は国王、ある時は騎士団長を夢に見て、成長してくると共に定まってくるものだ。
「で、最後に見た夢を知りたい」
「踏み込みますよね、オルター」
「いいだろ、俺がリーダーなんだからさ」
「全く、敵わないな」
尊大そうな態度でふんぞり返る彼が、誰より仲間思いなことを、デナーは知っている。オルターはデナーの羨望と憧れを一身に受けているのだ。
「適わないのは俺だよ、片手で捻られちゃう」
一方そう言ってへにゃりと笑う彼は、そんな憧れの感情を抱かれていることを知らない。
そして、デナーの重たい心の扉は開く。
「……ぼくは、お母さんとずっと、忍者稼業をして……世界一のからくり大屋敷を作りたかった」
「え!良いじゃん」
重すぎも軽すぎもしないリアクションだった。
「お前の家の回転扉だいぶ使い込んでるもんな」
「帰る度回っておりますから」
「今度もっと改造しようぜ」
「いえ、シンプルイズベストですので」
オルターの異能は、自身を領域に含められない。それでも、心を開き合うことはできる。
星空では知らない星座がきらきら瞬いた。
6/24/2025, 10:31:40 AM