ただひたすらにペンを動かした。
ほんとうになにも考えたくはないんだ。
数字を扱ってる時間だけは僕は何も考えないでいられたから。
この先のことも君のこともあの日のことも。
なんにも考えずに、瞬きすら億劫に感じるほど、僕はきっと弱かった。
ふと手を止めた時に考えてしまった。
ああ、考えてしまったんだ。
君の培った孤独について。
君はただずっと寂しかったんだ。
あの空に蠢くさそりのような、サーカスで火の輪をくぐるライオンのような、ドアの小窓からこちらを除く闇のような、そんな君の寂しさを、思慮を、白痴だと笑った彼らの罪はきっと許されるものでは無いから。
彼らは地獄に堕ちるだろうね。
地獄の門を叩けばその熱さに手が焼けこげればいい。
閻魔様の元にすらたどり着けずに足が取れてしまえばいい。
その薄気味悪い笑顔をビリビリと破られてしまえばいい。
ほんとうに、それを望むんだよ。
だって僕は君が好きだから。
せかいでいちばん、僕のおひめさまだったから。
君にはこれからいくつもの幸せが訪れるはずだから。
かの有名な織姫も目が飛び出でるほど驚くような綺麗なドレスを着て、指の先から足の先までぬるま湯に浸かっているような暖かさが続いて、眠る前の微睡みのような心地良さの中で生きていけるはずだから。
だから、ぼくは。
11/10/2025, 11:34:06 AM