「ん?どうしたの?俺の顔に何かついてる?」
最近彼氏になった瑞稀君。
こんな風に学校以外の、しかも遊園地で二人きりでデートできるなんて…。
夢みたいな幸せと、隣にいる瑞稀君のかっこよさにポーッとしていたら、見つめすぎてしまったらしい。
「なっ!なんでもないよ!見つめちゃってごめんね!」
慌てて顔の前で手を振る。
「あはは!見つめられるのは大歓迎だけどね」
笑いながら優しい目でそう言われて、私の顔がみるみる赤くなっていくのを感じる。
「さ、そろそろ開園時間だ。行こう!」
にこにこしている瑞稀くん。
言わなきゃ。
今言うんだ、私!
ぎゅっと手を握りしめて、軽く深呼吸をする。
「あ、あの!」
「なに?由衣ちゃん」
思ったより大きな声が出た私に、瑞稀君が不思議そうな顔でこっちを向いた。
言え!私!
「きょ、今日…」
「ん?」
「今日1日、私と手を繋いでもらえましぇんかっ!?」
噛んだー!
噛んだ噛んだ噛んだー!
どうしよう。あまりの恥ずかしさでまともに瑞稀君の方を見られない。
「由衣ちゃん、こっち向いて」
「で、でも…」
「ゆーいちゃん?」
「はいっ!」
思わず顔を上げて瑞稀君の目を見つめると、瑞稀君がほんのり顔を赤くしていた。
「ほら、手」
「え?」
「手、繋ぐんでしょ?」
「あ、うんっ!」
がしっ!
しまった!思わず両手で差し出された瑞稀くんの手を掴んでしまった。
さっきから何やってるんだろう私…。
案の定瑞稀君笑ってるし…。
「ははっ!そんなに必死にならなくても逃げないから大丈夫だよ」
「うう…」
「じゃあ、行こうか」
私は手を引かれながら、瑞稀君と遊園地のゲートへ向かう。
不意に立ち止まる瑞稀君。
「由衣ちゃん」
「なに?瑞稀君」
「由衣ちゃんの手、由衣ちゃんが嫌だって言っても離してあーげないっ!」
「…!」
耳が赤くなった瑞稀君の背についていくように、更に真っ赤になった私は歩き出す。
今日は、ぜったい、素敵な一日になる。
テーマ『君の目を見つめると』
4/6/2024, 10:57:52 AM