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「……もうすぐ夏祭りだね」
帰り道、街角に貼られていたポスターを見て呟いた。
一緒に行こうよ、なんて、言える勇気もなく。ただ、ぼんやりとポスターを見る事しかできない。
「そっか、もうそんな季節かぁ」
早いね、とまだ青い夕方の空を見て呟く彼。さらさらと小さな風が、街を通り過ぎていく。
「あっと言う間だよね。ほんと」
「ねー……夏は暑いから、早く秋になってくれないかなー」
そう言って、彼はポスターから目を離し、歩いていく。その後を付いていけば、いつもの様にくだらない話が始まって。
もう、窓から街の明かりと共に花火を見るのはうんざりなのに。君と一緒に、見たいのになぁ。

(街の明かり)

7/8/2022, 10:34:46 AM