大人になった私は、お祭りの屋台で金魚すくいをみつけると「かわいそうだな」って、そう思うようになった。
それはいつごろからだろう。
小さい頃は「楽しそう」と思うばかりだった。
なのに、大きくなってみると、あんなにもキラキラ輝いていた思い出が、そうは見えなくなってくる。
お祭りに屋台に限ったことじゃない。
普段はシャッターの多い、寂れた商店街とかも。
こんな時だけ、あいてるのを見て「普段はどうしてるんだろう」「つぶれちゃったりしないかな」と思ってしまう。
屋台ではしゃいだ声を上げる子供たちを、綿菓子みかぶりついて笑みを浮かべたり、仮面をつけてなりきってる子供を見ると、とても寂しくなる。
あの頃の、何の裏も事情も知らなかった頃には、もう戻れないのだなと。
「そこの人、金魚すくいやってかないかい!?」
私は屋台の人の威勢のいい声に、愛想笑いを返してその場をさった。
子供のころすくった金魚は、もともとよわっていたのかもしれないけれど、三日も生きられなかったから。
7/29/2024, 12:34:04 AM