理想郷に、漠然とした憧れはある。
けれど、いざ辿り着いたとして、どうだろう。
心が震えるほどの感動は、そこにあるだろうか。
理想郷が理想郷であるために必要なもの。
それは、自信の持つ理想が何なのかを
事前に思い描くことではないかと思う。
話は少し変わるが、大人になると、
好きな時にケーキが食べられるようになる。
カフェで注文したり、コンビニスイーツを試したり。
けれどその突発的に食べるケーキは、
子供の頃食べた誕生日ケーキより味気ない気がした。
あるとき、こう思った。
子供の頃の私が食べていたのは
ケーキへの期待だったんじゃないか、と。
私は少し、期待の仕方を忘れてしまった。
それは時に人を傷つけるし、
それに胸を踊らせるような時間もなくなった。
期待するということは楽しく、
同時に私の精神を削いでいく、
諸刃の剣に変わってしまった。
でも、理想郷なら。
夢の中みたいなまっさらな世界があるなら、
好きなものをなんだって並べられる。
今すぐ、もはや永遠に行けない場所だとしても、
想像のうちに生きるそれは、宝物になりえる。
死んだあとに行けたらいいな、くらいでも、
期待ができるものではないだろうか。
10/31/2024, 11:07:22 AM