俺の実家には一つだけ、俺が産まれた時から変わらない物がある
リビングにあるカーテンだ
実家のリビングのカーテンは既に、下の方はボロボロに傷つき、全体的に色焼けもしている。それでもリビングのカーテンだけは変わらない
そんなボロボロのカーテンを、何で新しい物に変えないのか疑問に思っていた俺は、久しぶりに一緒にお酒を飲んでいる親父に聞いてみた。
「なぁ、親父。何であのリビングのカーテンだけ買い替えないんだよ?」
すると親父は懐かしそうな表情をしながら話始めた
「あれか?あれは亡くなった母さんのお気に入りだからってのもあるけどよ…」
母は数年前に亡くなっている
そこで親父は少し喋る口を止め、お酒を一口飲んで枝豆を口に放り込むと再び話始めた
「俺が一人でも、母さんやお前を感じられるんだよ。覚えているか?お前が何かあって泣く時は、いつもあのカーテンに包まっていたんだぞ」
「そんな事覚えてねぇよ」
俺は苦笑いしながら答えた
「それに、あのカーテンでお前が掴まり立ちしたなぁ」
親父は懐かしそうに語った
それから半年後、父は母の所へと旅立った
通夜の前日、俺は子供の時の様にカーテンに包まって子供の様に泣いた。悔いのない様に泣いた。
葬儀を終えた俺は、実家にあるそのカーテンを持って帰り、自分の家のリビングに付けた。両親との大切な思い出の品だ。
※この物語はフィクションです
涙の理由
カーテン 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
10/11/2024, 3:23:38 PM