蓼 つづみ

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一年という時間は、
人生を一変させるには短いのに、
何かを失うには充分すぎる。

けれど私は、
あまり「失うこと」は考えないようにしている。

だから一年後を、
壮大には語れない。

ただ、
来年の今頃も、
ちゃんと季節を感じられるくらいには生きていたい。

それくらいの願いなら、
案外、人間らしい気がする。

――とはいえ、昨今は、 そんな他愛ない願いですら、 どこか不安定な時代になった。

物価は上がり続け、 昨日まで普通に買えていたものが、 じわじわと「迷う値段」に変わっていく。

世界は絶えず揺らされている。 戦争。 災害。 感染症。 技術の進化。 価値観の反転。

一年前には想像もしなかったことが、 平然と日常へ入り込んでくる。

だから、 来年の状況なんて、本当はわからない。
今ある当たり前が、 そのまま残っている保証はどこにもないんだ。

けれど、 それでも人は、 来週の予定を立て、 来月の服を買い、 来年の話をする。

不確かな未来を前にしながら、 それでも生活を続ける。
私は、その営みこそ、 人間の強さなのだと思う。

題 一年後

5/13/2026, 10:36:54 AM