海喑

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君が私にホントの気持ちを伝えてくれたあの場所。
雪が降ってたから、Pコートを羽織って、ホッカイロを貼って、スマホをポケットに入れて。
念入りに家の点検をして、大丈夫だから外に出る
ぴゅうぴゅう北風が吹いていて、少し身を屈ませつつもあの場所に向かう
そこは神社の裏側で、一つベンチがあるだけ。
だけど、そこで見る星空はとても綺麗だった。
私はそこに着いた。スマホをポケットから取り出して、時間を確認する。
9時か。
空はもう暗く、電灯の明かりとか、家の明かり以外の光がなくて、少し怖い
私はここで流星群を見たかったから、裏側に向かうと、先客がいた。
私はサッと体を隠した。顔をひょこっと出してその人を見る。
見覚えのある人だった。
ダウンコートにマフラーという厚着で座っているのは、彼だった。
話しかけに行きたかった。だけど無理だった。
勇気が出なかった。
いつもだったら、出るのだけど。
今日はいつもと違くて、一人で歌を歌っていた。
上手とも、下手とも言えない歌声。だけどその歌声はどこか心地よい。
私は気づいた。
これは、失恋系の曲じゃないか?物悲しい歌詞を君は口ずさんでいる。
ラスサビ前に、流星群が流れ始める。
上を向く。綺麗だ。神秘的な、そんな光景が目に浮かんだと思ったら、
君の歌声が、震えているのが分かった。途中途中、途切れてる歌を聴いて、
私は溢れる感情を抑えられなくなって、君の方に向かって言う。
「君は、その曲の歌詞に泣いてるのか、その歌詞に、自分の体験を照らし合わせて泣いてるのか、
私には到底─」
と言いかけた時だった。君は私の言葉を遮って言う。
「海暗はもう、俺の事嫌い、なんだろ?」
君は、声を震わせながら、途切れさせながら言う
「どうして、そうなるの。」
「だって、だって海暗は、あの時、俺の傍から離れてっただろ、
それで、そこからもう俺の事嫌いになっちゃったのかなって思って。」
私は声を少し抑えて、言う
「嫌い?私は君に対してそんな感情、持ったこともない。感じたこともない。
なんでかって?君がこの場所で、私に気持ちをぶつけてくれたから。その時からずっと、君のことが好きだ。
だから、次は私の番だ。」
「君を、死ぬまで愛す。ここで誓うよ。君を絶対に幸せにしてやるって。」
君は私がこの事を言い終えた後、抱きついてきた。
「ありがとう。本当に。」
私たちにとってこの場所は、本当に特別なものに、なるだろう。
この場所で私は、君の愛を誓ったんだ。
─この場所で─

2/11/2023, 12:46:12 PM