外気温が氷点下近くになる晩秋、剥き出しの種子"tiny love(仮)"という品種改良された苺が床下暖房の仄かな暖かさで育っていた。小粒ではあるが通常よりも酸味と甘みが強い。そんな苺を使用してジャムを作る。自作のレアチーズケーキと合わせて母に渡すためだ。僕の作るお菓子を喜んでくれるから、こっそり作って驚かせたいという悪戯心がむくむくと育っていた。
フードプロセッサーで粉々にしたクッキーにバターを混ぜてセルクルに敷き詰める。ゴムベラでクリームを整える。100均で買ったケーキ箱にしまい冷蔵庫で冷やす。市販のケーキよりも圧倒的に甘くて美味しい。原価の高い生クリームやバターを使用できるのが手作りの良いところだ。毎日ぐったりしている母が救いを求めるように一口食べて、その甘さにほっと一息つく。そして「おいしい」と言ってくれる。
喜びを肥やしにして
tiny loveは再び芽吹くのを待っている
題『tiny love』
10/29/2025, 7:20:08 PM